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国際シューベルトコンクール 第二話

偶然とは・・・・。

4月の日記にも書いた「スタインウェイハウス」でのリサイタル。この演奏会の後、長い間、何を勉強しようか思い悩んでいた。

ふと、「そういえば、ろくにシューベルトを弾いたことがないな・・・」と思い、楽譜棚に置いてあるシューベルトの楽譜を片っ端から読み漁った。
「う~ん、これは長すぎるし、これもちょっとなぁ~・・・」なんて一人でブツブツ言いながらページをめくり続けていた。

何年も前になるが、ワイマールで内田光子のCDを試聴もせず購入したことがあった。そのころ、シューベルトはソナタ2曲と即興曲とあと数えるくらいしか弾いたことがなかったし、シューベルトには全く興味を示さなかった。だから自然に「シューベルトの音楽をもっと知ろう」とも思わなかったし、どちらかといえば「死ぬほど退屈な作曲家」(これは言い過ぎか!?)のイメージが常にあった。

ところが試聴もせず“清水の舞台から飛び降りる”勢いで買った内田光子のCD(だって高かったから・・・)は、今までの僕のシューベルトに対するイメージを払拭してくれた。曲は「ソナタニ長調D850」と「ソナタイ短調D784」で、このCDを実際聴かれた方も多いのではないだろうか?とくに「ソナタニ長調」はこのCDのお陰で、僕の最も好きなソナタになった。彼女の演奏はファンタジーに溢れ、音のパレットが実に豊富で、以外と!?正統派の演奏であった。

前置きが長かったが、この「ソナタニ長調D850」は勿論、この“次に何弾くか候補”の最有力候補であったことは言うまでもない。もう一つそれと双璧の候補だったのは「ソナタイ長調D959」であった。これは、シューベルトの曲では唯一、東京音大時代から好きな曲だった。今はもう亡くなったレナード・ホカンソン教授の演奏会で彼はこの素晴らしいソナタを気品に溢れ、消え行く音を最後まで慈しむように演奏された。

ただ、せっかく勉強するのだったら、それにL先生に習うということを考えると、もっと男性的な厳しい曲の方がいいんじゃないか?(注:L先生は女性です!)
言い換えれば先生の得意な傾向の曲の方が習う価値があるのではないか?と考えるようになった。一生、先生に習っていけるわけではないし、シューベルトのソナタのような“大曲”になると年間に学習できる数も限られている。今、この時点で上述の件を満たす作品は、「ソナタハ短調D958」だったのだ。

このソナタをすることに決めたのがもう5月になってからの事であった。
それから、しばらく経ったある日、先生から
「あの、ベルリン交響楽団とピアノ協奏曲ができるらしいけど、貴方弾きますか?」と電話が急にかかってきた。
僕:「あ、もちろんやります。こんな機会滅多にありませんから。」

先生:「でも、条件があって、モーツァルトの協奏曲ならいいらしいけれど、何が弾けますか?」

僕:「じゃあ、第21番!」と即答した。

この21番の協奏曲は以前、悔しい思いをして弾くことができなかった曲であった。やっとこの名曲を人前で演奏できる幸せ、それとなんと言ってもオーケストラとの共演がなによりも嬉しかった。

この以前の日記に書いたこの6月の「ベルリン交響楽団演奏会」がなければ僕は「シューベルトコンクール」に出場しようと思わなかっただろう。その頃、パソコンの机にずっと前にコンクール事務局から送られてきた“コンクール要綱”がそのままぽんと置いてあった。その時までほとんどというか、全く意識していなかった「シューベルトコンクール」が急に僕に接近してきたのだった。何気なく課題曲をチェックしていると、なんとこの協奏曲が本選での課題になっているではないか!!


 

つづく
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