今日は今学期最後のレッスンでした。
今学期は割りと重要な本番があったので先生には沢山レッスンしていただきました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
去年はコンクールに行っていたり、コンサートで国外に出かけて行っていたりして、殆どレッスンしてもらってなかったので、先生には、
「私はあなたを100年間見かけなかったわよ!」
(注:ドイツ的なギャグ)といわれる始末・・・・。
我がクラスの毎月やっている発表会にも去年は一回も出演しなかった、いや、その時に限ってベルリンに居なかったから出演できなかったのだ。
久しぶりにレッスンを受けると、また毎週受けているときと違って、先生の指摘が新鮮に感じ、集中力も普段より増して、とても実りの多いレッスンになることが多い。
話変わって、この連日の暑さに閉口気味だったので、昨日、伸びきっていた髪の毛を約半年ぶりに切りに出かけた。ベルリンには日本人が多く住んでいることもあり、日本人の経営している美容院がある。そこで実に8年ぶりくらいに思い切ってショートカットにした。久しぶりのショートは手入れも簡単だし、実に気持ちがいい!!
今日はレッスンだったので、いつものようにレッスン部屋に入ると、まだ生徒が演奏しているのにもかかわらず開口一番、
「あなた誰!?」
また先生のボケ炸裂である。続けて、
「あなた、なにしたんですか!!??」
「あなたの芸術家精神はどこにいったのですか!!??」
僕はその言い方とこのショートカットがそんなに重要な問題なのかと思うと不思議で可笑しくてたまらなく噴出してしまった。そこにいたロシア人の女の子タンニャでさえも、
(ああ、こんなに短く切ってしまって・・・・あ~あ・・・)てな調子で僕の頭をまじまじと見ている。
「わたしゃ、ピアニストがこんな短髪にするのは大嫌い!!もう・・・・・・」
2年ほど前も僕がレッスンを受けているときに実は同じ事が起こっていた。同じクラスの日本人M君である。
彼が部屋に入ってくるや否や、先生は、
「あ”ぁ”ぁ”ぁ”~~~~~なんですかその頭!!!!」
「わたしゃ、ピアニストがそんな短髪にするのは大嫌い!!!」
M君はそれでもなかなか鋭い突っ込みを返した。
「いやぁ、ラフマニノフも短い髪だったし、別にいいんじゃないですか?」
さすがM君であった。彼の勝利!
2年の歳月を経て歴史は二度繰返された。
髪の毛にまつわる面白い身の上話があるのでご紹介しよう。
あれは僕がドイツにやってきて、正確に言うと、ワイマールに住み始めて10ヶ月ほど経過した頃だっただろうか。
10ヶ月間も髪の毛を伸び放題にしていた僕は、とうとう我慢も限界に達し、意を決してワイマールのとある美容院で切ってもらうことにした。
どうして“意を決し”なければならなかったというと、ドイツ人の美容師の方々の大半は不器用で、しかも、日本人の女性は“日本人形カット”(超真っ直ぐ切りそろえる!!よく言えば楠田恵理子風)、日本人男性はフィリピンかタイでオートバイを乗り回している“悪がきアジアンカット”(言葉で説明できない・・・。ほら、あのカットですよ!!あの!!)しか知らないのから、よほどの覚悟を決めとかないと行こうに行けない。
これがどういうことか想像していただけるだろうか?
例えば日本で流行っている、女の子だったら「シャギーカット」とか男の子だったら「無造作ヘア」とかは、彼らにとっては、そんなもんなんですか状態で、ただひたすらに“切りそろえて”いく。まあ、欧米人の髪の毛と日本人の髪の毛は全く異質のものだから無理もないが、それでも、日本人の美容師さんたちは外国人の髪の毛を器用にオシャレに切っていくではないか。見習え~~!!
そうそう、話が逸れてしまったが、いつものようにその日もMENSAで昼食を食べ、コーヒーをすすっていた。いつものようにクラリネットのS君がいて、
S君:「俺もこないだそこで切ったんよ。ほら。」
僕:「これだったら悪くないじゃん!」
S君:「これから一緒に行って美容師に説明してあげる。」
僕:「それなら安心安心。。」
これならと思い、一緒に美容院に出かけ、説明できない僕に代わり、彼は説明してくれた。
どうやら美容師のおばさんも「ふむふむ」うなずいている。後はお任せするしかない。
S君には「後でそっちに練習に行くからまた後でね。」と別れを告げ、彼は練習へと向かっていった。
いよいよ切り始まった。僕はじっと美容師の動きに注意し観察していたが、後ろの方がどのようになっているか前の鏡じゃ見えりゃしない。前も両サイドもなんとなく重たいような、膨れているような。。(う~~ん、まあ、こんなもんか。)と言い聞かせ、心を落ち着かせた。さて出来上がり、いざ自分のヘアスタイルを観て見ると
「・・・・・・・・・!!!!!」
言葉にならない・・・・・。
「俺のもみ上げは~~~~~~~~!!!!!!!」
「どうしてこのご時世にテクノカットなんだぁぁぁぁぁ!!!!!」「
これじゃフィリピンのオートバイ少年と一緒じゃないかぁぁぁぁ!!!」などなど。。。おかしさを超えて、悲しくなった。

そこで美容師の人に抗議、もしくは「ここもうちょっと軽くしてもらえませんか?」なんて注文できたらな・・・・・・。
語学は大切です!!
学校の練習場所まで歩いた。約束どおり彼に“出来上がり”を見せるために。
いつも美しいゲーテ公園もこのときばかりは意地悪に見えた。木々もこのおかしなヘアスタイルを笑っているように感じ、流れる川のせせらぎの音でさえ僕を笑っているように聴こえた。
約束どおりS君と丁度そこにいたAちゃんに“ナンプラーやコリアンダーの似合うこのアジア風屋台髪”を見せると彼らはしばらくビックリして無言になり、やがて泣き笑いをしたのだった。僕も彼らにつられて涙が出た。
僕の場合は笑い涙じゃなく、単に自分自身があまりにも惨めだったからだが。